桜餅の関東と関西の違い!長命寺と道明寺の名前の由来と全国的分布!
春になるとひな祭りなどを中心に食べる機会も増える桜餅。
桜の葉の香りと甘い餡子が絶妙にマッチしていますが、関東と関西の桜餅は見た目も味にも違いがあります。
関東では主に「長命寺」と呼ばれていますが、関西では「道明寺」と呼ばれています。
どちらも「寺」という字が使われていますが、名前の由来も気になりますよね。
どちらの桜餅が多数派なのか、全国的分布を調査していると面白いことがわかりましたよ!
そこで今回は、桜餅の関東と関西の違い!長命寺と道明寺の名前の由来と全国的分布!というテーマで詳しくご紹介しますね。
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桜餅の関東と関西の違い!
春の息吹を感じさせる淡いピンク色と桜の葉の塩漬けが特徴的な桜餅。
ただし、関東と関西では材料や作り方など特徴に大きな違いがあり、まるで別物といった印象さえ受けます。
そもそも「餅」という字が使われていることから、餅米が使われていて「モチモチ食感」をイメージしがちですよね。
でも、そうとばかりとも限らないのです。
昔から関東と関西では文化や習慣にも違いがありましたが、桜餅の場合も例外ではないようです。
まずはそれぞれの材料や特徴などを見ていきましょう!
関東の桜餅の材料や特徴
関東の桜餅は「長命寺(ちょうめいじ)」「長命寺餅」と呼ばれています。
主な特徴として、餡を包む生地が小麦粉でも作れるという点にあり、「餅と呼べるの?」という声も聞こえてきそうですね!
【関東の桜餅の材料】
- 皮:小麦粉、砂糖、食用色素(ピンクの色粉)
- 餡:もともとこし餡が主流で、現在は粒餡も
- 葉:桜の葉の塩漬け
作り方は、まず小麦粉、砂糖、色粉を水で溶いてから、フライパンで薄く焼いてクレープのような皮を作ります。
皮の粗熱が取れたら「こし餡」を巻くように作りますが、皮の巻き方には「円筒型」「二つ折り」などがあり、稀に「袱紗折り」などもあります。
あとは桜の葉の塩漬けを巻いたら出来上がりです。
ただし、これではほぼクレープですので、小麦粉をベースに「白玉粉」「餅粉」「味甚粉」「上南粉」などもち米由来の粉を加えたり、うるち米を加工した「上新粉」を加えることもあります。
最近の関東の桜餅は、モチモチ食感を出すためにお米を加工した粉を加えることが多くなっています。
小麦粉だけだと焼き菓子の特徴に近いですが、桜餅と呼ぶに相応しい工夫が施されていますね!
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関西の桜餅の材料や特徴
関西の桜餅は「道明寺(どうみょうじ)」「道明寺餅」と呼ばれています。
主な特徴は、餅の表面がツブツブとしており、食感も粘りや弾力に優れている点です。
これは材料となっているもち米由来の「道明寺粉」によるもので、よりモチモチ感が強いのも関東との違いの1つです。
桜餅以外にも、京菓子として知られる「椿餅(つばいもち)」の他、お彼岸の「お萩」などにも利用されています。
【関西の桜餅の材料】
- 粉:道明寺粉、砂糖、食用色素(ピンクの色粉)
- 餡:もともと粒餡が主流で、現在はこし餡も
- 葉:桜の葉の塩漬け
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作り方は、水に浸けておいた道明寺粉を蒸し上げ、色粉を加えた砂糖を加えて外側のお餅を平らに広げておきます。
あとはつぶ餡を包んで丸く形成し、桜の葉の塩漬けを巻けば桜餅の完成です。
道明寺粉は馴染みの薄い方も多いと思いますが、「水に浸したもち米を一度蒸し、乾燥させて粗めに挽いた粉」です。
挽き方により、全粒、2ツ割れ、3ツ割れ、4ツ割れ、5ツ割れの5種類があり、粒の大きさによって食感も変化します。
関西の桜餅は大福や草餅などと同じようにずっしりとしていて、関東のものよりお餅らしくなっています。
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桜餅の長命寺と道明寺の名前の由来!
桜餅は関東では「長命寺」、関西では「道明寺」のことを指していますが、名前の由来が気になる人も多いと思います。
そもそも全国どこへ行っても呼び方は「桜餅」であり、わざわざ「寺」を付けて呼ぶこともほとんどありませんよね。
関東で長命寺といえば、東京都墨田区向島にある老舗和菓子店「長命寺桜もち・山本や」の商品を指しており、普段食べているものは桜餅としか呼びません。
関西でも材料となる粉を「道明寺粉」と呼ぶことはありますが、桜餅自体を道明寺と呼ぶことは少ないです。
ただし、どちらも「寺」という文字が使われており、名前の由来に寺院が関与していることは明らかです。
長命寺の名前の由来
関東の桜餅として知られる「長命寺」という名前は、東京都墨田区にある天台宗の寺院「長命寺」に由来します。
寺院の御本尊は「阿弥陀如来」で、墨田区七福神のうち弁財天を置いている有名な観光スポットの1つです。
建造年代には諸説あり、もともとは「宝樹山常泉寺」と称していましたが、江戸幕府3代将軍徳川家光の命により長命寺に改称したといわれています。
当時から桜の名所として有名でしたが、落ち葉掃除をしていた寺の門番・山本新六は春になると大量の落ち葉に悩まされていたそうです。
そこで新六は機転を利かせ、1717年、葉っぱの塩漬けを利用した桜餅を作って寺の門前で販売してみたところ、花見客に喜ばれ大ヒット。
これが桜餅発祥の由来であり、「長命寺」という名前の由来ともなっています。
この山本新六という人物こそが、東京都墨田区向島の老舗和菓子店「長命寺桜もち・山本や」の創業者です。
お店は昔から現在まで「桜もち」のみを扱っている専門店となっています。
【長命寺桜もち・山本やの詳細】
- 所在地:東京都墨田区向島五丁目1番14号
- TEL:03-3622-3266
- 営業時間:8時30分~18時
- 休業日:毎週月曜日(変更有り)
- 予約:電話予約OK
- 駐車場:なし
- 値段:「バラ220円」「店内召し上がり350円(お茶付き)」「持ち帰り5個入り1300円~」※税込み
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道明寺の名前の由来
一方、関西の桜餅として全国に広まった道明寺という名前は、大阪府藤井寺市にある真言宗御室派の尼寺「道明寺」に由来しています。
飛鳥時代の592年、聖徳太子の尼寺建立の発願を取り入れ、「土師連八嶋(はじのやしま)」が私邸を寄進して建立したとされる寺院で、現在の道明寺天満宮の南に位置しています。
御本尊は国宝に指定されている「十一面観音菩薩」。
昔、このお寺の尼が乾燥したもち米を挽き粉状にしたのが道明寺粉の始まりであり、これを材料とした桜餅が道明寺と呼ばれるようになりました。
道明寺粉は今でこそお菓子作りに利用される粒の粗い粉ですが、もともとはもち米に十分水を吸わせてから蒸し上げ、天日干しにした「干し飯(ほしいい)」という保存食でした。
戦国時代にはお湯に戻してすぐに食べられる携帯食として、兵士たちが常備していたともいわれています。
関東の長命寺との違いを挙げるとすれば、関西の道明寺は材料となる粉自体がたまたま寺院で作られたもので、それが桜餅の名前の由来となっている点です。
桜餅の長命寺と道明寺の全国的分布は?
画像出典:桜餅調査(au天気)
桜餅の全国的分布を調べてみると、関東の長命寺が約33%、関西の道明寺が約66%となっています。
もともと関東は「将軍様のお膝元」と呼ばれた江戸の街(東京)を中心に、様々な面で幕府による文化の縛りが厳しいという特徴があります。
一方、関西は江戸からも遠かったため、「天下の台所」と呼ばれた大坂(大阪)や「京の都」であった京都の影響などが強い傾向があります。
一般的に関西の文化が全国に広がるケースが多く、桜餅の分布に関しても同様のことがいえます。
【桜餅の長命寺と道明寺の分布】
『長命寺(関東)寄りの地域』※一部を含む
- 東北地方:太平洋側(福島県、宮城県、青森県、秋田県などの一部)
- 石川県金沢市のみ
- 関東地方
- 山梨県
- 静岡県
- 長野県
- 島根県
- 鳥取県
『道明寺(関西)寄りの地域』※一部を含む
- 北海道全域
- 東北地方日本海側(山形県庄内地方、青森県津軽地方)
- 北陸地方
- 近畿地方
- 中国地方
- 四国地方
- 九州・沖縄地方
※一部地域も表示しているため、上記画像と異なる場合があります
まず特徴的なのが北海道ですが、江戸時代から明治時代にかけて日本海海運で活躍した「北前船」で道明寺が伝えられたと考えられています。
秋田県、石川県金沢市のみ、島根県、鳥取県の一部は、局所的に長命寺が伝わったようです。
例えば島根県はもともと道明寺派でしたが、明治時代に松江藩元家老・有沢宗閑なる人物が御用菓子司であった老舗和菓子店に江戸風の桜餅を作らせたことで長命寺派になっています。
全国的な桜餅の分布を見ると、当時の様々な事情により局所的に普及した地域があることがわかります。
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桜餅の関東と関西の違い!長命寺と道明寺の名前の由来と全国的分布!のまとめ
冬が終わり暖かくなる頃になると無性に食べたくなるピンク色の桜餅。
関東と関西では材料や作り方などの特徴にも違いがあり、時代背景とともに全国的に分布したことがわかります。
どちらも長命寺と道明寺といった具合に「お寺」の名前が桜餅の由来になっており、日本の食文化らしい一面も垣間見ることができます。
地域差が大きいだけに両方とも食べたことがある人は意外と少ないのかもしれませんが、ぜひどちらも味わってみたいですね!
旅行やお仕事で他県に行かれる際は、和菓子店に寄ってみるのも良さそうです。
また、現在ではインターネットで2種類セットで購入できる所もありますので、食感や味の違いを楽しめそうですよ!
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