鏡餅の意味と由来!するめや昆布などのお飾りに込められた意味は?
日本の正月飾りの1つとして欠かせない存在となっている鏡餅。
ただ、どんな意味を込めて飾られているのか、由来はどこから来ているのかなど、ご存じではない方も多いと思います。
また、鏡餅には橙、串柿、昆布、するめ、裏白、謙葉などのお飾りが付いていますが、1つ1つに込められた意味も気になりますね。
丸くて平たい形のお餅が重なっていますが、どうして「鏡」という文字が使われているのでしょうか?
そこで今回は、鏡餅の意味と由来!するめや昆布などのお飾りに込められた意味は?というテーマで詳しくご紹介します!
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鏡餅の意味とは?
代表的な正月飾りには、鏡餅の他にも門松やしめ飾りなどがありますね。
これらは全て「年神(歳神)様」との繋がりを意味する上で飾られており、日本人にとってはとても神聖なものです。
年神様とは、日本神話の『古事記』に登場する「建速須佐之男命(たけはやすさのおのみこと)と「神大市比売(かむおおいちひめ)」の間に生まれた「大年神」を指しています。
特に鏡餅は、毎年正月に良縁を運んでくださる、この年神様の『御魂(みたま)』と深い関係があります。
また、年神様は穀物神としても有名なため、もともと農耕民族である日本人が正月にお迎えすることはとても有意義なことです。
では早速、鏡餅に込められた意味について説明していきます。
年神様へのお供え物
まず第一に、鏡餅には毎年一年間の幸福や恵みもたらしてくださる年神様へのお供え物という意味があります。
もともと正月を迎える度におせち料理やお雑煮を振る舞い、様々な飾り付けをしてお祝いするのは、有難いご利益を授けてくださる年神様を祀るためのものです。
お餅は昔から「幸福の源」とされる神聖な食べ物と考えられており、「晴れの食」といわれてきました。
様々な飾り付けを施した鏡餅をお供え物とすることで、有難い年神様を最大限にもてなすことができます。
そして、穀物神でもある年神様をもてなすことは、新年の門出を祝うとともに、1年間の豊作を祈願する意味が込められています。
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年神様の依り代
鏡餅は単にお供え物として飾るだけでなく、年神様が正月期間中に宿る「依り代」という意味を持っています。
依り代とは、神や精霊などが憑依する対象物のことで、松の内の期間は鏡餅を「ご神体」とする考え方です。
日本古来の民間信仰・神道には、神や精霊、魂などが森羅万象に宿るという自然崇拝があります。
この神道の自然崇拝によると、「古事記」や「日本書記」に登場する人の形をした人格神は、所縁のある物に憑依することで、その周辺に力を及ぼすと考えられています。
また、民間宗教においては、年神様は私達の祖先である「祖霊」、恵方の方角にいる「年徳神(歳徳神)」とする考え方もあります。
特に祖霊は家を守護すると言われていますので、鏡餅に依り代という意味があることは家族の幸福を祈願する上でも欠かせない存在であると言えます。
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お年玉の原点
正月に親戚の子どもなどに会うと、お年玉をあげることも多いですね。
しかし、お年玉の原点としての意味が鏡餅にあることをご存じという方は少ないかもしれません。
鏡餅は正月期間に年神様の依り代となることで、その霊魂=「御魂(みたま)」が宿ると言われています。
昔は金銭ではなく、この鏡餅の餅玉を有難い「御年魂」「御年玉」として、家長が子どもたちに分け与えていたのです。
年神様が鏡餅に残した御魂には「1年間生き抜くための生命力と厄除けの効果」があるとされていました。
これが現在のお年玉の原点であり、この餅玉を食べることで「今年も健やかに暮らすことができる」という意味を持っていたのです。
正月に雑煮を食べる習慣が生まれたのも、お餅に秘められた効果を得るためでした。
ちなみに、現在の様にお年玉を金銭で渡すようになったのは、昭和30年代頃からのお話です。
数え年という概念
現代においては、自分の誕生日を迎えると「満○歳」という数え方をしますよね。
しかし、昔は「数え年」という考え方が主流で、この概念にも鏡餅が深く関わっています。
数え年の意味は、「誰でも毎年元日を迎えると1つ歳を取る」というもの。
つまり、正月に年神様の御魂が宿る「御年魂」「御年玉」を頂く度に、1歳ずつ年齢を重ねるという数え方になります。
母親の胎内にいる時にはすでに御魂を授かっていると考えられていたため、赤ちゃんとして誕生した時を1歳とし、その後元日を迎える度に2歳、3歳と成長していきました。
鏡餅を飾る意味として「数え年」という概念が関わっていることをご存じの方は少ないかもしれませんね。
正月は新年を迎える慶事と漠然と考えがちですね。
しかし昔は、毎年年神様から「御年玉」を頂き、誰しもが年齢を重ねる「誕生日」としての側面も持っていました。
歯固めで長寿を願う
飾っている間に硬くなる鏡餅には、「歯固め」という意味も込められています。
平安時代の長編物語の1つ、紫式部の『源氏物語』にも「歯固めの儀」に関する一節に鏡餅の記載があります。
今でいう「鏡開き」に該当する儀式ですが、昔の人は硬くなった餅を食べて歯を丈夫にしようと考えていたようです。
そして、歯の健康を保つことは長寿を願うという意味に通じるものがあります。
歯が丈夫な人は十分咀嚼して食べるため、消化器官に掛ける負担も少なく、栄養も吸収しやすくなりますね。
たった1本歯を抜いただけでも寿命が変わってくるとも言われていますので、年齢の「齢」の字には「歯」という文字が使われています。
鏡餅に歯固めの意味があることは有名ではありませんが、長寿を願う儀式の必需品だったのです。
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鏡餅の由来とは?
鏡餅発祥の由来をさかのぼると、紀元前29年に日本の第11代天皇に即位した垂仁天皇(すいにんてんのう)の時代であるという説があります。
大国主命が幸福を招くために「荒魂の大神に紅白の餅を祭るように」と助言したという逸話がありますが、あまりにも古いお話で信憑性に乏しいとも言われています。
ただ、鏡餅の名称の由来が、日本神話に登場する「三種の神器」の1つである「八咫鏡(やたのかがみ)」という説もあることから、その歴史は古く、平安時代以前と言われています。
平安の世に誕生した源氏物語にも「鏡餅」という文言が残っています。
また、昔の鏡は青銅製の丸い形をしており、特別な霊力が宿ると言われていましたので、鏡餅は単に一般の鏡を模して作られ、飾られるようになったとする説もあります。
現在の様に家の「床の間」などに飾られるようになったのは、平安末期から150年以上経過した室町時代からと言われています。
特に室町時代の武家においては、男子のために床の間に鎧や兜を飾り、その前に鏡餅をお供えする風習がありました。
鎧兜は「具足(甲冑)」とも呼ばれていたため、当時は「具足餅」という名称だったようです。
ちなみに女子の場合は、鏡台の前に供えていたようです。
鏡餅の由来は、正確には具足餅から来ているという見方が一般的で、当時から昆布や海老、熨斗鮑、橙などの縁起物を飾り、おめでたい正月飾りの1つとしていたようです。
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鏡餅にお飾りに込められた意味とは?
鏡餅のお飾りにも、それぞれ縁起物としての意味があります。
一般的には、神事に神饌(神様への供物)を載せる「三方(さんぽう」の上に、四方紅、御幣、裏白、譲葉などを敷いて、丸くて平たいお餅を二段重ねに飾ります。
その他、昆布、するめ、勝栗、串柿、五万米、黒豆、伊勢海老、橙など、地域によってお飾りに使われるものは様々です。
今では、ガラス製やクリスタル製、切り餅の入ったタイプなどが市販されていますが、本来の飾りについても知っておきたいですね!
では、鏡餅のお飾りに込められた意味についてご紹介しますね。
四方紅(しほうべに)
四方紅とは、三方の上に直接載せる正方形の色紙のことで、四辺が全て赤く縁取られています。
鏡餅では天地四方の災いを払い、1年間の繁栄を祈願する意味で利用されています。
昔から「赤」には魔除けの効果があるとされていましたし、「寿」の文字が入っていることからも、縁起物として人為的に作られた色紙であることは言うまでもありません。
最近では奉書紙が代用品として使われているため、見る機会も少なくなっています。
御幣(ごへい・おんべい・おんべ)
鏡餅のお飾りの1つとして、赤と白の四角い紙を交互に折った「紙垂(しで)」を取り付けた御幣があります。
御幣は通常、二本の白い紙垂(しで)を木の幣串に挟んだものとして、神社で神主さんや巫女さんが持っているのを見かけますね。
もともと神道の祭祀に用いられる「神々への神聖な捧げ物」ですが、鏡餅では「四方に大きく手を広げて繁盛を願う」という意味が込められています。
1年間の幸福と恵をもたらす「年神様への供物」に相応しいお飾りとなっています。
ちなみに、御幣に取り付ける紙垂は白だけでなく、金箔や銀箔を使った物などがあります。
鏡餅には赤い紙垂が使われていますが、これは魔除けを意味しています。
裏白(うらじろ)
裏白は鏡餅だけでなく、注連縄などにもお飾りとして利用される縁起物の植物です。
ウラジロ科ウロジロ属のシダで、葉に見える部分は正確には「葉柄(ようへい)」と言います。
葉柄から伸びる葉は常に対をなして生えることや、裏側が白い粉を拭いたように白っぽく見えることから「夫婦ともに白髪が生えるまで」という長寿を願う意味が込められています。
また、裏側が暗く見えないことから「二面性のない清廉潔白さ」「裏表のない性格の持ち主」の象徴とされています。
鏡餅のお飾りとしては比較的有名ですが、筍や松茸などの食材の下に敷かれているイメージも強いですね!
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譲葉(ゆずりは)
庭木として栽培されることの多い譲葉は、ユズリハ科ユズリハ属の常緑高木です。
若葉が育ってくる春以降になると、それまで付いていた前年の葉が居場所を譲るように落葉するという特徴があります。
その落葉する姿が家督を子どもに譲るように見えることから、鏡餅では「家督の相続」「家系の繁栄」を意味する縁起物としてお飾りに利用されています。
昔から銀杏、珊瑚樹・樫などとともに「防火樹」としても知られ、火災による延焼を防ぐ意味で庭に植える家庭も多かったようです。
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昆布
「喜ぶ」という語呂合わせで、日本では縁起物食材の代表格となった昆布。
昔は若布(わかめ)をはじめ海草全般を「布(め)」と呼んでおり、昆布は「広布(ひろめ)」と呼ばれていました。
鏡餅にも「喜びや幸福を広める」という意味で、多くの地域でお飾りに利用されています。
古くは、蝦夷(北海道の古称)で採れる食材として「夷子布(えびすめ)」と呼ばれていた時代もあり、七福神の恵比須様にあやかって縁起物の象徴的存在になったようです。
また、平安時代末期成立の古辞書『伊呂波字類抄』には昆布の読みに「コフ」と書かれており、「子生」の字が当てられるようになりました。
そのため、「子宝に恵まれる」という子孫繁栄の意味で鏡餅にも飾られています。
するめ
鏡餅に飾られることの多いするめは、ヤリイカやスルメイカを干した乾物です。
日持ちする食材として定評があることから「末永く幸せが続くように」という意味が込められた縁起物の代表格となりました。
また、結納品として用いられる際は「寿留女」という当て字が使われ、昆布とともに女性の健康や子宝に恵まれる象徴の品として珍重されています。
その他、室町時代頃にはお金のことを「お足」と呼んでいたことから、足が十本もあるするめは縁起の良い食品とされたという説もあります。
鏡餅には昆布と一緒に飾ることで、1年間幸福や喜びが絶えない年になりそうです。
ちなみに、するめの「する」は「掏りにお金を盗まれる」「博打でお金を擦る」という意味で縁起が悪いとされ、「あたりめ」と縁起の良い言葉で呼ぶようになりました。
勝栗
鏡餅に飾られている勝栗とは、乾燥させた栗の実を臼で搗(つ)いて、鬼皮と渋皮を取ったものです。
「搗栗」と書くこともありますが、「勝つ」という意味で語呂を合わせ、昔は出陣のお祝いの縁起物とされていました。
したがって、日本でまだ戦(いくさ)が行われていた時代の名残を持つおめでたい食材と言えます。
江戸時代には正月用の祝儀とされていましたが、現在も鏡餅のお飾りとしている地域もあります。
受験やスポーツなどの必勝祈願、選挙の出陣式などでもよく見られる縁起物ですね!
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串柿
もともと柿の実は幸せをかき集めるという意味で「嘉来(かき)」=「喜びが来る」を表す縁起物の1つです。
また、柿の木は寿命が長いことから「長寿を祈願する」、果実に大きな種が含まれていることから「子宝に恵まれる」といった意味も持っています。
鏡餅では干し柿を串に刺した串柿が使われていますね。
これは「たとえ渋柿でも、手間をかけることで立派な飾りになる」という点から、立身出世や懸命に精進することの大切さなども表しています。
さらに、串柿の串は三種の神器の1つ「天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)」を表しています。
日本神話において、天照大神が瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)に授けた三種の宝器(剣・鏡・玉)のうちの剣を意味します。
鏡餅はもともと「串=天叢雲剣」「餅=八咫鏡(やたのかがみ)」「橙=八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)」という三種の神器を象った正月飾りと言われています。
五万米(ごまめ)
五万米は「田作り」とも呼ばれ、正月の祝い肴やおせち料理の具材としても有名ですね。
カタクチイワシの稚魚を素干しにしたものや、それを炒って醤油や砂糖などで味付けしたものを呼んでいます。
五万米は完全な当て字ですが、その字が表す通り「五穀豊穣」の意味を込めて鏡餅に飾られることがあります。
もともとは田植えをする際の高級肥料となっていたため、豊作祈願の縁起物とされていました。
また、「まめ(忠実)」とは体が丈夫で健康であることを意味するため、「御」を付けて「御忠実(ごまめ)」と呼んだのが始まりとされています。
黒豆
黒豆は五万米同様、「丈夫」「健康」「元気」を意味する「まめ(忠実)」を表す縁起物です。
鏡餅にも飾られていますが、おせち料理で毎年食べる方も多いですね。
また、「まめに気を配って暮らす」「まめに働く」といった語呂合わせに使われていますね。
いつも丈夫で元気に働けるというのは、人が生きて行く中で最も重要なことの1つと考えられていたため、鏡餅のお飾りにする地域もあります。
伊勢海老
海老は腰の曲がった老人を連想させる生き物です。
そのため、長寿を願う意味で縁起物として飾られることも多く、鏡餅では高級な伊勢海老を飾る地域もあります。
また、海老は茹でると赤く変色しますので、縁起物としておめでたい席に利用されることも多いですね。
正月は1年の始まりを祝う慶事ですので、お値段の張る伊勢海老を鏡餅のお飾りにすると豪華なイメージになります。
橙(だいだい)
そもそも柑橘類の橙は、成熟しても落果しにくく、1本の木に新旧代々の果実が付いている様子が見られるという特徴があります。
この様子が「ダイダイ」という和名の由来となっています。
鏡餅では一番上に飾られていますが、家系が「代々栄えるように」という意味が込められています。
ビタミン類をはじめ栄養も豊富で滋養保健効果が高い果物ですが、最近は温州みかんなどで代用されることも多くなりました。
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鏡餅の意味と由来!するめや昆布などのお飾りに込められた意味は?のまとめ
正月飾りの1つとされる鏡餅は、様々な意味が込められている縁起物です。
伊勢海老などの豪華食材をはじめ、するめや昆布、橙などと一緒に飾れば、年神様から有難いご利益を受けることが出来そうですね。
普段は模造品などを飾っている方も、ぜひ本物のお餅や食材、植物などを利用して飾り付けするのもオススメですよ!
年神様の依り代になる器ですので、普段より豪華に飾って「最高の御年魂」を頂いてくださいね。
鏡餅の発祥の由来については、少し曖昧な点もありますが、むしろ神秘的なイメージを掻き立てますよね。
「三種の神器」を象っている点も、神話好きの方にはたまらないエピソードになりそうです。
住宅事情の許す限り、門松やしめ飾りなどの正月飾りと一緒に鏡餅も飾っておきたいですね!
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