年の市(歳の市)の意味とは?浅草の羽子板市や有名な開催地も!
毎年、年末になると全国各地で開催されている年の市(歳の市)。
ただ、一般的には馴染みの薄い言葉のようで、どういった意味を持つ行事なのかご存じない方も多いようです。
東京都台東区浅草にある浅草寺では12月中旬に「羽子板市」が行われており、有名な年の市の1つとされています。
有名な開催地は他にも多数ありますが、「参加しないと年を越せない」という人もいるほど昔から大切にされてきたイベントです。
1度も行ったことが無いという方は、お近くの寺社で開催されていないかチェックするのも良いでしょう。
そこで今回は、年の市(歳の市)の意味とは?浅草の羽子板市や有名な開催地も!というテーマで詳しくご紹介します。
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年の市(歳の市)の意味とは?
年の市(歳の市)の意味とは、年末に寺社などの境内やその脇道などで開催されるお正月用品を販売する「市」のことです。
しめ飾りをはじめとする正月飾りや、年始祭に必要な品、お餅、海産物、乾物、衣類、雑貨などの購入を目的として地域の住民が集まり、賑わいを見せている歳末の行事です。
昔から寺社での伝統行事として行われていますが、スーパーやデパートなどで行われている「歳末セール」を小規模にしたものと考えるとわかりやすいですね!
年の市の歴史は古く、江戸時代初期(1650年代)から始まったと言われています。
当時から毎月「定期市」が開催されていましたが、年内最後の市を意味するため「晦日市」「暮市」「節気市」「詰め市」などとも呼ばれています。
寺社の境内などで開かれることや、正月に年神様を迎える準備でもあるため、年の市は地域の集落にとって神聖な意味を持つ年中行事の1つです。
また、昔は日常的な生活を送る「ケ(褻」」に対し、改まった特別におめでたい状況を「ハレ(晴)」として、生活スタイルなどのギャップも大きなものでした。
「晴れの門出」「晴れの日」「晴れ着」などの語源にもなっていますね。
正月を迎えることもハレの1つとされ、年の市では普段味わうことの無い豪華な食材やお酒、高級な衣装、縁起物などを購入して、新しい1年を新鮮な気持ちで迎えるという意味もあります。
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大晦日の市は捨て市とも!
年内最後の「定期市」を意味する年の市ですが、大晦日に開催されるものを「捨て市」と呼ぶことがあります。
販売する側としてはその年の最終日でもあるため、「捨て値」で購入を促進することから名付けられた呼び名です。
もともと正月用品を扱っていることもあり、商品が売れ残ることは業者にとって不利益です。
逆に消費者としては破格の値段で購入できるチャンスですので、大晦日の捨て市は多くの人でごった返すという傾向もあります。
昔は農作物を売った貴重な代金で、ハレの日だけ高価な品を買い求める傾向がありました。
その名残りは現代にも引き継がれており、年の市の中でも「捨て市」は特別な意味を持ち、普段より賑わいを見せる行事となっています。
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年の市(歳の市)の代表格は浅草の羽子板市!
全国各地で開催されている年の市(歳の市)の中でも、最も有名で代表格と言われるのが東京都台東区浅草の浅草寺で開かれる「羽子板市」です。
「将軍様のお膝元」と呼ばれた江戸の街では最も歴史が古く、墨田川に「両国橋」が掛けられた万治二年(1659年)頃始まったと言われています。
当初は日常生活用品を扱う「市(縁日)」が立ちましたが、その後、正月用品や華やかな羽子板を売る風習が根付き、現在でも年の市と言えば浅草というイメージも強いですね!
羽子板市の日程は江戸の暮れから変わることなく、12月17日~19日までの3日間開催されています。
浅草寺の御縁日は毎月18日ということもあり、年末は「納めの観音詣の日」として、より一層賑わう一日となっています。
「来年も良い年になりますように」と願う人々が大勢集うことで、浅草は昔ながらの江戸の街の風情を感じることができますね。
ただし、明治時代に入ると近隣の商店で正月用品などを購入する人々が増えたため、「年の市」という意味合いは薄れており、現在では「羽子板市」に重きを置いた行事になっています。
羽子板を販売する意味は?
浅草寺の年の市は、江戸時代中期になると「羽子板」を販売するようになりました。
そこには子どもの健やかな成長を祈る意味が込められており、羽子板市と呼ばれるまで発展して行きました。
羽子板と言えば、もともと室町時代から始まった羽根付きという遊びの道具です。
当時は「胡鬼板(こぎいた)」と呼ばれていたとされ、羽根は「胡鬼子(こきのこ)」と呼ばれていました。
胡鬼子の黒い部分は「無患子(むくろじ)」の実で作られており、その字が表す通り「子どもが患わないように」という意味が込められています。
また、胡鬼子は蚊を食べる蜻蛉(とんぼ)が飛ぶ様子に似せて作られており、疫病の原因となる蚊などの害虫を退治することを表しています。
その後、羽子板は魔除けの効果があるとされ、正月に女の子に贈る風習が生まれています。
浅草寺の年の市で販売されるようになる頃には、人気歌舞伎役者や狂言役者などの似顔絵などをかたどった「押絵羽子板」が流行し、爆発的に流行するようになりました。
現在でも、その年話題になった人物の似顔絵をかたどった羽子板が販売されており、正月飾りの縁起物として欠かせないものとなっています。
単なる飾り物というイメージが強いですが、浅草寺の年の市で羽子板が販売されるようになった背景には、魔除けの効果により女の子を守るという意味も込められています。
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年の市(歳の市)の有名な開催地は?
ここでは、全国的に有名な年の市(歳の市)の開催地をご紹介します。
寺社の境内や路傍だけでなく、街中で開催されている地元の商工会議所主催の市も含まれています。
また、毎年決まった日程で行われるものもあれば、日曜日に合わせて行われているものもあります。
東京から「薬研堀不動院」「日本橋人形町」、神奈川から「長谷寺」、福井から「勝山」の年の市をチョイスしてみました。
お近くにお住まいの方はぜひ参考にして頂いて、出向いてみるのもオススメです。
薬研堀不動院(やげんぼりふどういん)納めの歳の市
真言宗智山派の大本山とされる川崎大師平間寺(神奈川県川崎市)の東京別院・薬研堀不動院。
目黒不動、目白不動と肩を並べる『江戸三大不動』の1つとされ、全国でも江戸時代に開催された最後の年の市(歳の市)として有名です。
地元商店会主催の歳末大出庫市とともに開催されており、日用品や雑貨などが破格の値段で販売され、大盛況となっています。
現在、東京の寺社で開かれている年の市は、浅草寺と薬研堀不動院のみとなっています。
【薬研堀不動院・納めの歳の市】
- 所在地:東京都中央区東日本橋2-6-8
- 開催エリア:不動院付近の東日本橋二丁目町会路上
- 開催日時:12月26日~28日の3日間
※2020年は感染症対策のため、すでに中止が決定しています。
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人形町(にんぎょうちょう)歳の市
年の市(歳の市)が開催されるのは寺社やその周辺だけではありません。
東京の日本橋人形町でも年の市が開催され、多くの露店が並び、しめ縄や鏡餅などの正月飾りなど販売しています。
開催時期には周辺デパートなどで歳末セールが行われていますが、地元住民を中心に多くの人が足を運ぶ市となっています。
昔ながらの江戸の情緒を感じさせる年末の風物詩の1つです。
【人形町 歳の市】
- 所在地:東京都中央区日本橋人形町
- 開催エリア:人形町通り
- 開催日時:毎年変わりますが、12月25日頃~大晦日が目安
鎌倉市・長谷寺の歳の市
通称・長谷観音と呼ばれる鎌倉市の長谷寺は、12月18日が年内最後の観音様のご縁日となります。
毎年、この日に合わせ、境内では「納めの観音」「御足参り」「福寿草市」が行われ、参道では年の市(歳の市)が開かれています。
神棚、熊手、だるまなどをはじめとする正月用の縁起物の露店などが並び、かなりの混雑が予想される1日となります。
年の市以外でも「御足参り(志納金1,000円)」は特に有名で、観音様の御足に直接触れてお参りできる1年で唯一のチャンスです。
【鎌倉市・長谷寺の歳の市】
- 所在地:神奈川県鎌倉市長谷3丁目
- 開催エリア:長谷寺参道
- 開催日時:12月18日10:00~20:00頃(時間は目安)
長谷寺の御本尊は「十一面観音」とされ、頭部に11の顔を持つ菩薩として有名です。
年の市に行かれる際は、ぜひ新年の幸福を願ってお参りしておきたいですね!
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福井県勝山市の勝山歳の市
毎年、福井県勝山市で開催されている勝山年の市(歳の市)。
冬の風物詩として幕藩時代から300年以上の歴史を持ち、昔は12月の26日と1月の26日に「市」が立っていました。
以前は、正月用の縁起物をはじめ、食材、衣類、民芸品、木工品、などの店が軒を並べ、「勝山みの市にないものは馬の角だけ」と言われるくらいの品数の多さや盛況ぶりを見せていました。
現在では1月最終日曜日のみの開催となっていますが、地元特産品や伝統工芸品などを扱う近隣の素人商人の露店が並び、勝山でなければ手に入らない物などが購入できる年の市となっています。
【勝山年の市】
- 所在地:福井県勝山市本町通り
- 開催エリア:本町通り
- 開催日時:毎年1月最終日曜日8:30~14:00頃(時間は目安)
1月最終日曜日と言えば旧暦の年末辺りですが、今でも地元勝山以外の客も訪れる人気の年の市となっています。
また、手作りの工芸品などが販売されているため、売り手と買い手のやり取りも楽しめる市として有名ですね。
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年の市(歳の市)の意味とは?浅草の羽子板市や有名な開催地も!のまとめ
年の市(歳の市)とは本来、正月用の縁起物や食材、衣類などを購入できる年内最後の定期市を意味するものです。
しかし近年では、浅草の羽子板市のように特定の縁起物に特化した露店が軒を並べる市もあります。
時代とともにその数は減ってきてはいるものの、昔ながらの風情を味わう冬の風物詩として賑わいを見せる行事の1つです。
また、スーパーやデパート、ショッピングモールなどでも「年の市(歳の市)」という言葉が使われるようになり、寺社とは関係ない所でもよく見かけるようになりました。
お住まいの市町村でも見かけることはあると思いますので、正月用品や日用品、雑貨などを求めてお出掛けするのも良いですね。
お目当ての品が普段より安く手に入りやすいのも魅力の1つですよ!
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